丹波篠山映像大賞メイン画像
 

丹波篠山映像大賞情報 いまを未来へつなぐ

第36回大会 審査委員メッセージ

映画監督

西垣 吉春
(審査委員長)

映像作品とは・・・!
 
 映像とは等と今更いう事でもあるまいが、スチール写真も、SNSのワンショットも映像には違いない。ただ映画界、放送関係者が審査する以上は、一枚一枚の動く絵の積み重ね(モンタージュ)でもって映像作品としている。
 敢て、こんなことを言うのは、応募作品の中にアルバムと変わらないような動かない絵の連続に加え、ナレーション及び音楽・テロップを載せているという作品を散見する。
 ひょっとしたら行間、字間を楽しむ小説の方に・・動かず観客を魅了する絵画の方に・・朗読劇の方の応募に適していると思われる作品があった。
 今年も多彩な作品を観ることができた。特に「まつぼっくりと牛丼」は、丁寧な撮影と長時間の映像の中から7分に纏め上げた力作だと思う。
 「アルビノももかさんの希望の歌」も力作だが、作者の主張が先行したように思う。少し映像の美しさや見てもらうための物語性を加えると訴える力が逆に出たのではないだろうか・・・。ノンフィクションと言えども作品です。作品にして世にテーマを問うのがドキュメント作品と思います。
 「千年の子守歌」「虹色の森」の2作品は、もっともっとメルヘンの世界を求めてもよかったのではないでしょうか。「私のパンの焼ける音」は、日常の中にちょっと襟を正したい、ドキッとした作品でした。ただ、似た映像の連続(これも手法ですが)で、ワンカットでいいので最後に映像美として表現できていたらなぁ!と思いました。
 「84歳のビデオグラファー」も捨て難い纏りのある作品でしたが、高校生らしい感性が観たかったと言えば贅沢でしょうか・・・
 何時も申し上げることです。他人様に鑑賞して貰う訳ですから、作者が訴えたい映像をクライマックスで表現して欲しいなあ・・・と。                       (京・嵐山にて)

NHK神戸放送局
副局長

能美 龍太郎

第36回丹波篠山映像大賞
  
 3年ぶりに審査を担当し、作品の様式や表現がさらに多様化した印象を持ちました。SNSの普及によって動画投稿や編集スキルが身近になったことが背景にあると思います。一方、時代に左右されないベテラン勢、それに映画やドキュメンタリーの制作を志す野心的な若者の作品も健在でした。それだけに、選考の判断についてはジャンルを問わず、作品のメッセージが余韻となって心の中にどれくらい響き続けるか、を重視させてもらいました。
 大賞を受賞した「千年の子守唄」は、老いや集落の過疎化という抗えない宿命を描きながらも、樹齢数百年のクスノキに象徴されるふるさとの山河が、諸行無常を大きく包み込んでいく、あるいは優しく受け入れていく世界観を表現していました。生きることの意味、死んでいくことの意味を考えさせられ、作品を見終わった後、深い安らぎが心を満たしました。
 記者の視点で言えば、「84歳のビデオグラファー」が印象に残りました。「調査報道」で掘り起こした新事実を交えながら、東日本大震災に向き合い続けて今を生きる男性を描き切っていました。東日本大震災でつらい思いをされた方は無数にいらっしゃいます。それぞれの体験もまた、異なります。東日本大震災を伝えるうえで、無数の人々や多種多様の事実の中から、どこに焦点を定めるか…。制作チームには、さまざまな判断があったことでしょう。何を取材し、何を伝えるか、を判断することに対し、昨今、「印象操作」という言葉がつきまとうようになりました。「切り取り」も批判的意味合いで口にされるようになりましたが、制作チームは、確かな目で震災のひとつの断面を切り取り、私たちに示してくれたと思います。

サンテレビジョン
取締役
編成スポーツ・地域情報担当

久保 仁 

第36回丹波篠山映像大賞


 第36回丹波篠山映像大賞にご参加された皆様、開催にあたりご尽力してくださった関係各所の皆様、ありがとうございました。同時にいろんなイベントもあって大変華やかな映像祭だったと思います。また、今年も審査員という立場で参加させて頂き、誠に感謝いたします。
 今回は、映像というものの定義について改めて考えさせられる機会となったと感じています。「生きる」というテーマをどう表現するのか?単なる映像という解釈だけではなく、幅広い感性で取り組んだ作品が多かったのかなと思います。故に審査する上で非常に迷い、難しいものとなりました。一方、若い方や女性、そして県外の作品も多く、この映像祭が全国に浸透しているのだということを再認識しました。
 その中で私の心に刺さった作品は、中野美子さんの「まつぼっくりと牛丼」でした。場所は東京のど真ん中、新橋。高齢のお婆さんの仕事である靴磨きを通して、彼女の生き様を凝縮した短編ドキュメントです。印象的だったのはタイトルにもある「まつぼっくり」と「牛丼」です。映像に出てくる「まつぼっくり」は、お婆さんがお客さんを今待っていますよ!という意味だそうです。新橋と言えばサラリーマンの象徴でもある場所だと思います。需要はありそうですが、わざわざ靴磨きにお金を払う人は最近少ないのかもしれません。雑然と行き交う人々の中で、ポツンと一人、仕事を待っているお婆さんとまつぼっくりの対比がなんとも寂しく哀愁を感じました。また、お婆さんがその日に稼いだお金で「牛丼」を食べるシーンがあるのですが、働かざるもの食うべからずでしょうか。自分で稼いだお金でたくましく生きている姿に素直に感動しました。
 最近は、誰でも簡単に映像作品を表現できる環境が広がっています。本格的に習わなくても勉強できる機会はいくらでもあります。スマホでサクッと撮影したり、AI機能を使えば勝手に作ってくれたりすることもできます。しかし、大切なのは何を表現したいのか?ではないでしょうか。問題意識をもって自ら作り出してこそ面白いものが生まれてくると思います。手を惜しまず、何を伝えたいかをじっくりと考えて取り組んでほしいと思います。 次回も沢山の素晴らしい作品のご応募、期待しております。