31回大会を終えて 審査委員からのメッセージ

審査委員の講評>>35回34回33回32回30回29回28回27回26回25回24回23回22回21回

西垣

映画監督

西垣 吉春
(審査委員長)

あなたは歴史の証言者!

 人には様々な生き方がある。そこにドラマが生まれます。かけがえのないそれぞれの人生が映し出されます。丹波篠山映像祭は市民の皆さんが作り出す映像作品の一大イベントで歴史の証言者でもあると信じています。将来、風俗歴史学者の資料になるでしょう。映し出される服装、建物、生活風景などどれをとっても将来貴重な映像資料です。
 沢山の作品を寄せて頂いた中に「何時、何処で」が表現されていないために入賞を逸した作品があったことはとても残念です。他人に鑑賞して貰うためにはせめてこの用件だけは充たしてもらいたいものです。限られた時間での作品作りですが、何時、何処でを表現するに10秒もあれば充分でしょう。最悪スーパーでもナレーションでも表現できます。
 私はアマチュアの皆さんの作品を楽しみにしています。新聞やテレビで扱わない(目もくれない)出来事を、この大きなスクリーン映し出してくれるからであります。
 大賞を受賞した「人生の坂道を歩んで」は、モデルにも恵まれました。このモデルの表情は、どんな名優にも負けないほどの表現力がありました。「オオムラサキ」は少し纏り過ぎて魅力に欠けましたね。「奇跡の倒木桜」は、何時何処が的確に表現できていれば魅力が倍増したでしょう。この映像祭は技術的な処理よりも、作者の感動を皆で味わいたいと思います。
                          (京・嵐山にて)

菊地 夏也

NHK神戸放送局
放送部長

菊地 夏也

第31回 丹波篠山映像大賞 作品講評

  

 丹波篠山映像大賞を受賞した「人生の坂道を歩んで」は、100歳を超えた女性の人生を映像で綴ったもので、制作者の女性に対する深い思いがあるからこそ今回の受賞に至ったと思う。この女性の家族についても取材していれば、さらに深みの感じられる作品になったのではないか。
 兵庫県知事賞の「オオムラサキー生きる知恵―」は、たいへんに苦労しながら撮影したことが伺われる作品だった。鳥の鳴き声、幼虫が葉っぱを食べる音、雨音など、自然の中の音を生かしていることも良かった。アリに襲われて幼虫や蛹が死んでしまう場面も、自然界の厳しい生存競争、生死を考える意味もあり大事なシーンだと感じた。さらに欲を言えば、オオムラサキの雄と雌が出合い、卵を産むまでも見たかった。
 丹波篠山市長賞の「奇跡の倒木桜」は、ニュース映像でも見たことがあったが、京都に住む制作者らしく丁寧に取材していた。音楽は控え目にして自然の中の音を生かしたり、花見客のインタビューを撮ったりすると更にいいし、映像で分かることは字幕を入れなくてもいいと感じた。
 NHK神戸放送局賞の「嵐山のベテラン俥夫」は、撮影手法、映像の撮り方に工夫があって良かった。主人公の俥夫のプロフィールをはじめ、1日何時間、何キロ走るのかなど基本的な情報が欲しかったし、お客さんとのやりとりも、もっと見たかった。 サンテレビジョン賞の「しきもりさん日記」は、福祉施設で店番をする女性に注目した視点がいいし、ユーモアの感じられる描き方も良かった。食事やリハビリだけでなく、さらに主人公の女性の個性を感じられる場面、制作者の発見があれば、作品を見る人の関心も高まるのではないか。
 「生きる」というテーマでの作品作りは、幅広い題材を取り上げることができるので悪くはないと思う。ただ、「自分史」のような作品が多くなりがちなので、もっと生きることの切実さを感じさせたり、社会的な問題を捉えたりした作品を見たいと思う。 アマチュアの映像作家は、もっと映像構成を考える力を磨くと、テーマに沿った良い作品を作ることができるのではないか。それには、作品の全体尺を7分間ではなく、5分間に絞るといいと思う。1つのテーマで5分間の作品というのは、思いのほか多くのことを語ることができると、これまでの経験で感じているからです。

大同

サンテレビジョン
報道スポーツ局長

石濵 真司 


第31回大会を終えて

 

 私たちの映像制作の仕事には、稀に"取材対象者が決まった時点で成功"という事があります。阪下千代美さんの大賞作『人生の坂道を歩んで』は、まさにそんな作品ではないでしょうか。地元・丹波篠山市に住む101歳の長澤せい子さんを取材。結婚や戦争から現在の生活まで、長澤さんが詠む短歌を挟みながら、上手く編集されました。長澤さんの人生の節々の出来事が見る人に訴えかけます。阪下さんが「長澤さんに感謝したい」と話しているように、取材者と取材対象者が二人三脚で取った賞でしょう。会場に長澤さんも出席されていたのは嬉しい限りでした。
 知事賞『オオムラサキ―生きる知恵―』は、昨年大賞を受賞した谷口正治さんの作品。前回の『オトシブミのお母さん』同様、丁寧に定点観測を重ねて、オオムラサキが羽化するまでの貴重な生態を記録しています。
 市長賞『奇跡の倒木桜』は、おととしの台風で倒れた桜の木々を撮影。翌春、倒れた状態で花を咲かせ、花見に訪れた人たちを楽しませながらも、その後伐採されたり、あるいは修復された桜の木の様子をBGMとテロップ(字幕)のみ、ナレーションなしで構成しています。物悲しい音楽とともに哀愁的な印象の作品ですが、地元の人たちの声が入れば、もっと作品に深みが出たと思います。
 今年から丹波篠山映像大賞と名前も一新され、新たなスタートを切りました。今回もたくさんの応募がありましたが、若い人たちの作品が少ないのが課題です。例えば、現在7分の作品の尺を少し短くするとか、兵庫県内の高校の放送部に声をかけるなどの工夫も必要ではないでしょうか。
 また、取材のために県外等の遠方へ撮影に出かけるケースがありますが、むしろ自分の身近な所にこそ"取材対象"があります。普段の何気ない日常の中に、"原石"があるかも知れません。文字通り、地に足のついた作品が多く寄せられる事を期待しています。

奥野

実行委員長
奥野  勇

「発見」と「想像力」

 

 大賞の「人生の坂道を歩んで」は、100年を生きた主人公の圧倒的な存在に降参です。作品としては消化不良です。多くを語り過ぎた感はありますが、それでも見ている側が勝手に想像してしまいます。出来ることなら後を継ぐ周りの人たちが、主人公から「何か」を引き継いでいる筈なので、そのあたりをラストシーンに持って来れば、更に深いメッセージを持った作品になったと思います。
 県知事賞の「オオムラサキ-生きる知恵-」は、昨年に引き続き虫の生態という、極めて地味な素材を丁寧に取材・編集された作品で、この作品からは、どうしても人間では及ばない力が自然界に有ることを思い知らされます。作品を観た多くの人に新しい「発見」があります。欲を言えば、少しでも人間社会との絡みが有れば、もっと親しめる作品になったかと思います。
 市長賞の「奇跡の倒木桜」は、ナレーションを使わなかった・・・という狙いが、反って見る人の想像力を擽ったと言えるでしょう。更に言えば、桜を見に来た人々の(インタビューではない)生の声などを効果音として取り入れたかったですね。想像力が益々掻き立てられると思います。
 その他の作品でも魅力ある素材が揃っていましたが、それぞれ説明し過ぎており、観る人の想像力を掻き立てられなかった。素材を紹介するのは必要なことなのですが、説明し過ぎることによって観る人の想像力を奪ってしまう。もったいないと思います。見る人の「想像力」を引っ張り出すことが出来れば、作家としての表現の幅が広がります。
 「生きる」というテーマは、よく「難しいテーマ」と言われます。しかし、作者が素直に自身の感性に照らしてアンテナを張れば、おのずとテーマは見えてくるもの。科学技術が進化しデジタル社会の今こそ、個々の人間の感性を大切にしたいものです。

 


Copyright (C) 2022 Tamba Sasayama Video Grand Prix. All Rights Reserved.