23回大会 審査員からのメッセージ

審査委員の講評>>29回28回27回26回25回24回23回22回21回
西垣吉春

映画監督
西垣 吉春
(審査委員長)

薄化粧の誘惑!

 今回は「作品名」について考えてみたいと思う。
 皆さんが一生懸命に撮影し編集した作品に「題名」を付ける。是は意外と難しい。簡単にパット思い付 くこともあれば、捻っても捻っても妙案が浮かばず最後は「エイ・ヤー」 で決 定なんてことがよくある。ただ、善し悪しは別にして考え抜いた題名は、観客 に伝わるものだ。

 ぷらっと本屋さんに入った時など題名や帯の解説で本を手にすることがある。著者の意思とは関係なく営業的に付けられることも多い筈だが、上手な題名、 キャッチコピーには魅せられる。

 斯界も流行廃りがあって、やたらと長いタイトル、内容が判るタイトル、抽 象的過ぎるタイトル等など多種多様ではある。作者の好みだから構わない で・・・・という御仁もあろう。しかしコンクールに出品する以上、薄塗りの 化粧くらいはしてほしい。

 今回のグランプリ部門で「炎に挑む」「美容室物語」がタイトルと内容が合致 し、魅力的な題名となった。

 丹波篠山は、高原の盆地である。このコンテストの頃の山野は、晴天の日は 朝霧が立ち込め、小雨の日は、霧に包まれ、雨が上がると霞がたなびく。そし て雪も降る。山水画の世界に誘われる町だ。何時も薄化粧をしている。

森田
NHK神戸放送局
放送部長
森田 尚人

アマチュアならではの作品を

 いずれも力作ぞろいで、興味深く拝見しました。より見やすい作品にするために、いくつかアドバイスをさせていただきます。

 身近な素材から発見を
 テーマを選ぶ際は、身近な出来事や人の中から新たな発見がないか探してみていかがでしょうか。普段、見逃している意外な光景や、身近な人の知られざる側面など、身近なものでも視点を工夫すれば意外と面白い映像が撮れるものです。

 撮影はじっくり
 アマチュアの方の強みは締め切りにとらわれず、じっくりと撮影できるところではないでしょうか。これはと思う対象を見つけたら、時間をかけて丁寧に追いかけてみてはいかがでしょう。作品の質はある程度、撮影期間に比例します。

 思い切って捨てる
 テレビニュースのリポートは通常、3分から4分程度の長さで作ります。それより長いものを飽きずに見てもらうには、構成に相当な工夫が必要です。応募規定は8分ですが、もう少し短く、5分以内を目指してみてはいかがでしょうか。どうしても必要なシーン以外は思い切って捨てると作品がぐっと見やすくなります。

 他人の目でチェック
 作品を見る人は、登場する人物や事柄について予備知識はありません。初めて見る人が理解できるかどうか、最後に他人の目でチェックしてください。

 来年も皆様の力作を期待しています。

瀬川均

(株)サンテレビジョン企画開発部長
瀬川  均

映像に何を伝えるか

 大賞の『炎に挑む』は、丹波焼に向かい合う陶工の情熱を映像と音だけで描き出した意欲作で力を感じました。ナレーションが無いのが表情や炎に意識を集中させる効果を生み、撮影や編集に確かな技量があればこその作品でした。
 知事賞の『美容室物語』は行きつけの店を題材に、美容室の裏側と若者のがんばりを描き、構成・演出力を感じる作品でした。着眼点も良く、身近な題材から新たな共感を呼び起こす作品に好印象を持ちました。
 サンテレビ賞の『牧師さん〜遠く離れたボランティア』は、高校生達が制作しました。路上生活者へのボランティアを取り上げた作品で、社会性の高いテーマに関心を持ち、若い人が声を上げていく事は素晴らしい事だと思います。
 コンテストのテーマである「生きる」についてですが、人は少しの幸せや希望のため、多くの苦しみを抱えながら必死にもがき歩んでいると思います。出会いと別れ、喜びと悲しみ、そういったものを切り取り、幸せや苦しみを一瞬でも作品として共有できるか否か、思いを馳せる事が求められると思います。
 東日本大震災では、いろんな意味での絆が注目されています。復興の道のりはまだまだこれからですが、被災地の方々には希望を忘れず、生き抜いて欲しいと思います。時間の経過とともに温度差が生まれないよう、被災者に寄り添い続ける事こそ大切だと考えます。
 ビデオの作品づくりも、つまる所は見る人と思いや感情を共有できるかどうかが問われます。興味を持ったことに徹底的にチャレンジできるのもアマチュアの特権です。心にひびく何かを感じる作品が生まれる事を期待しています。

酒井勝彦

視聴覚ライブラリー経験者
酒井 勝彦

七転八倒して伝えようとする努力を!

 このコンクールの第1回から運営と審査に関わって来ました。当初はVHSやβというテープで、今のフルハイビジョンとは比べ物にならない画質でしたし、編集機能も、「とにかくつなぎ合わせる」のが精一杯の時代でした。
 仕上がった作品は、技術的にも稚拙なものでしたし、大画面では見るに堪えないものでした。しかし、作者は自分の「思い」を第三者に伝えるために「苦心」を重ねたものです。
 それが今は高画質になり、編集機能もプロと同じものが使えるようになりました。その結果、ややもすると画質や編集テクニックにごまかされるようになり、自分の「思い」を、七転八倒して伝えようとする努力が希薄になりつつあるようです。
 ビデオは普段の生活の、いわば居間で見るメディアです。画質も技術も大切ですが、それよりも何よりも、自分が撮しとった自分の材料を使って、何度も何度も推敲を重ね、隣で一緒に見てくれる人に、あなたのあふれる思いを伝えたいですねぇ。
 画面に出て来る主人公は、実はあなた自身であって、あなたの「思い」を登場人物に語らしめてほしいのです。それはまさにあなたの「生きた証し」ですねぇ。
 「知ってください! 私の思いを!」というのがこのコンクールのポリシーなのです。主催者の私たちは、そのポリシーを大切にして来ました。着飾った外見ではなくて、中味を見せて欲しいのです。
 このビデオを作らざるを得ないというあなたの「ほとばしり」で、あなたをギュッっとハグしたくなる程に、私に感動をください。

奥野勇

実行委員長
奥野  勇

特に印象に残ったのは・・・

★「美容室物語」の作品としてのまとまり
 身近な日常の中から、よくテーマを掘り起こし、上手に作品としてまとめ上げました。企画・構成が特に良かったです。 撮影・編集・音声全てに見本となる作品でした。欲を言えば、修業中の若者の紹介だけに留まらずに、今後の夢や目標・意気込みをエンディングで強くメッセージ出来れば更に良かったですね。

★「炎に挑む」の力強い映像、 「炎に挑む」は、メッセージの伝え方に課題はあるものの、映像の強さで大賞に輝きました。篠山や窯業を知る人には深さを感じられる作品ですが、知らない人にはなかなか理解が難しい作品だったかなと思います。そういう意味で、審査員の間でも賛否意見が割れました。 モチーフの良さに助けられました感もありますが、ナレーションもなくタイトルも少ない分、見る方の想像力が増す作品だと思います。

★また「牧師さん、遠く離れたボランティア」については、決勝大会の時に言い忘れたことがありましたので、ここで補足致します。 高校生の作品としては、とても難しいテーマにチャレンジしたことの意義は大きいと思います。残念ながら、1年以上もかけて取材した割にはその苦労が作品を見た人に伝わってきませんでした。炊き出しのシーンばかりではなく、牧師さんの日常も取材するとかすれば、もっと立体感のある作品になったと思います。今後に期待したいですね。

 <生きるとは・・・> あくまで私見で極論ですが、「生きているもの」と「生きていないもの」を分けるとすれば、「意志の有無」ではないかと思っています。

 


Copyright (C) 2010 Tanba Sasayama Video Grand Prix. All Rights Reserved.