21回大会を終えて

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西垣吉春

映画監督
西垣 吉春

ワクワク名作品を

腰の曲がったおじいさん、おばあさん。祭りの場面で登場したり、昔の話を語ってくれたりする。その大きく映し出された顔に幾重もの皺。俳優には出せない魅力で、ノンフィクションの醍醐味だろう。また、アマチュア作品ならではの迫力である。

皆さんの作品は、市民の歴史の証人であり、町の学芸員の任務も担っていると私は信じている。従って、作品を上手にまとめようと考えないでほしいし、下手でも一生懸命カットを重ねることに努めてほしい。取材を充分すれば、自ずと作品に力が出てきて、訴える力も醸し出される。鑑賞者をも魅了すると思う。編集やカメラ技術は、慣れればそのうち上達する。作者の視点、視線が大切である。

出品作品の中に、どこかの放送局を真似たようなものをみかける。勿論、他人様に鑑賞してもらうには、良くまとまっていることは大切なことだが、個性が消されては元も子もない。
丹波篠山ビデオ大賞が求めるのは、プロの目が届かない、プロが気を留めないような、皆さんの身の回りのこと、作者自身が大切にしたいこと、訴えたいことの表現である。
例えば、全国どこでもある祭、風俗、風習、風景、生き物など丁寧に表現すれば「所かわれば品変わる」で、結構おもしろい作品にでき上がる。鑑賞者が、共通点を見つけたり、相違点に気がついたりと・・・。

また、パロディ劇あり、アニメ作品ありと、審査員が目をパチクリするような夢のような奇妙な作品があっても時には良いと私は思っている。
こんな作品笑われると自己評価しないで自分史をつくる。町の歴史を綴るつもりでワクワクするような作品にまとめてほしい。素人の気軽さを武器にどんどん公募してください。

平地正宣

NHK神戸放送局
放送部長
平地 正宣

ビデオ大賞を審査して

  決勝大会に進出する作品はテーマも撮影技術もしっかりしていて、甲乙つけ難いものばかり、審査で私は、取材・撮影を進める中で見つけた「新しい発見や驚き」を、映像や音声で素直に表現できているかどうかを、一つの評価のポイントにしました。
ただこの場合、作品の中に、素直に表現するための「新しい発見や驚き」がなくてはなりません。実はこれが意外に難しいのです。

  作品を作る時、事前のリサーチや撮影の下見で情報を集め、全体の構成や流れを考えます。そして「このシーンではこんな展開をして、インタビューでこの話を使う」などと考えながら撮影を進めてゆくと思います。ところが考え通りの撮影やインタビューが出来れば出来るほど、何故か作品はつまらなくなります。取材者の頭の中のシナリオが優先され、対象者の生きた姿をとらえていない場合が多いのです。俳優が演じているのならいざ知らず、シナリオに沿った展開だけでは「新しい発見や驚き」を見出すことはできません。大事なことは、最初に作った構成が「新しい発見や驚き」でどんどん書きかえられていくこと。必要なのは新たな展開を「面白がる心」、邪魔になるのは「面倒だと思う心」です。

  ティッシュペーパーの「こより画」を作る女性を取り上げ、NHK神戸放送局長賞を受賞した「80歳の挑戦!」は、この「驚き」を素直に表現した作品です。
女性の姿を「すごい!」と感じている取材者の様子が手に取るようにわかり、映像に勢いを与えていました。それが作品の出来の良さにもつながりました。

  記者の駆け出し時代、著名な彫刻家にインタビューした事があります。この方の口癖が「おもっしぇー(面白い)」でした。制作の苦しみから日々の生活の苦労まで、何を聞いても最後は「そこが、おもっしぇー」で締めくくります。私の大変好きな言葉になりました。 何事も「おもっしぇー」ものだと思います。楽しく作品を作ってください。

瀬川均

(株)サンテレビジョン
事業部長
瀬川  均

ビデオ大賞を振り返って

  審査員として初めての参加でした。65本の応募があったグランプリ部門、決勝大会に進んだ8作品は見ごたえのある力作ぞろいでした。やはり、コンテストではオリジナリティーの強い作品が求められると思います。その点、大賞に輝いた『自書伝~あい スマイル編』は作者自身の体験に基づいた学生らしい問題提議で、第三者的なプロの作品とは一味ちがう、良い意味でアマチュアならではの作品でした。

  完成度や構成力、見せ方のテクニックでは大賞受賞作を上回るものもありました。でも、最も大切なのは「何を伝えたいか」という思いの強さ、それに「みずみずしさ」がどれだけあるかです。題材や作りが良くても、どこかで見たような感じがするのでは、心を揺さぶる事はできないと思います。歌や音楽でも人の曲をまねるより、思いを込めたオリジナル曲で勝負する方がより心に響き、アピールするのと同じ事です。「キラリ生きる」がテーマの大会だけに、なおさらではないでしょうか。

  自身の家族を描く場合も、身内の撮影ならではと思わせるような、自然ににじみ出る情感やふれあいがもっと出ていれば、より惹きつけられるのにと思う作品がありました。地域の事象を通し人々の絆を描く場合にも、単に記録に終わらない事が大切だと思います。取材対象との人間関係や距離感を生かし、テレビでは映し出せないものをアリの視点で捉える事ができればと思います。

  プロのように仕事ではないのですから、身構えず自然体で、チャレンジを楽しみながら積み重ねて行くのが作品作りへの一番の近道ではないでしょうか。身近な人・地域を切り取った作品に、どんな普遍性があり人々の共感を呼ぶのか?思いを馳せる事も必要かも知れません。ハッ!と思わせ、何かを気づかせる、アマチュアならではの独創的な作品が生まれる事を、これからも期待しています。

酒井勝彦

映像作家
酒井 勝彦

篠山がめざすもの

  篠山が主催するビデオコンクールは、一貫して「いのちを生きる」ということをテーマとしてきました。「生きていて良かったー」ということを、作者の目を通してみんなに伝えて欲しいという一点なのです。そういう想いで私は第1回から関わって来ました。

  コンクールですから、撮影や編集技術が優れていることも大切でしょう。景色が美しいことも大切でしょう。しかし、それより何より、作者の前向きで純真な気持ちと訴求力こそが、大賞に求める私たちのテーゼなのです。

  出品作品を作るプロセスで、悩み、苦しみ、成長し、自分と他者の命を見つめていただけることを「願い」としたコンクールなのです。グランプリに輝いた作品は、必ずしも技術が良かったのではありません。審査員のコメントは「作品」に対してではなく、作品を作った「あなたの見つめ方」への賞賛なのです。そういう意味では、「画面に出てくる主人公を作者がまとめる」のではなくて、「作者の思いを主人公に語らせる」ということなのですが、傍観者的なまとめ方をされている方が多いのを残念に思います。本当の主人公は、作品を作っているあなたなのだということを忘れないでほしいのです。

  8分以内という時間制限がありますが、これは、「8分を超えないでね」ということです。5分でも6分でも、言いたいことがきっちりまとまっていれば、それはそれで良いのです。駄作の8分は秀作の5分を超えられないのです。

  来年も沢山の応募をお待ちしています。「私はこんなに輝いて 私なりに今を生きていますよ」と、今を一緒に生きている人たちに伝えようではありませんか。

奥野勇

実行委員長
奥野  勇

21回大会を振り返って

  大賞に輝いた作品「自書伝 ~あい スマイル編~」は、大会の「生きる」というメインテーマに真正面から挑んだ作品として飛び抜けたメッセージ性を持ち、「勇気」を強く感じました。当事者でなければ取り上げ難い素材・テーマであり、作家本人の体験をもとにした貴重な作品といえます。インタビューが多く荒削りで、技術的に課題は多いものの今後が楽しみです。

作家の皆さんに物ごく贅沢な要求

  この数年、ノミネートされた作品全体に言えるのは、「素材は悪くない」けれど「消化しきれていない」ということです。惜しいです。もちろん、すべての作家に求めるものではありませんが、「生きる」というテーマに対して「深い」作品が、もう少し多く存在して欲しい。これは私見ですが、技術の向上により経験者にとっては作品が素早く作れるようになったため、作家の皆さんが「何となく満足してしまう」傾向にあり、テーマの本質に対して正面からじっくり向き合えていないのかもしれません。

アドバイス

  シンプルに考えましょう!この作品は、「誰が・どういう人達に・何を伝えたいのか?」を常に意識する訓練を!作家自身は理解しているつもりでも、第三者には伝わらないことが多いですね。誰でも制作にず~っと関わっていると、どうしても「独り善がり」になってしまいます。(これは仕方のないことです) 客観的な視点を持つよう意識し「全く事前情報のない第三者にちゃんと伝わっているのか?」を考えてみましょう。
  例えば仮編集の段階で何人かの第三者に見てもらい感想を聞いてみる。その反応から、足りないものを見つけ出し対応する。伝えたいことを基準に考えて「無駄なものを捨てる勇気」も必要です。そして「エンディング」にこだわり、伝えたいメッセージをそこに集約することです。

  いろいろ厳しいことを書きましたが、ビデオ制作の良いところは★取材や撮影・編集をすることで、日常出合うことのなかった人や新しい発見、深みに触れられること。 ビデオ制作を大いに楽しんで、皆さんの暮らしを何倍も何十倍も豊かなものにしてください!

 


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