審査委員の講評>>33回・32回・31回・30回・29回・28回・27回・26回・25回・24回・23回・22回・21回 |

映画監督
西垣 吉春 (審査委員長)
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新鮮な眼力で作品を創ろう!
今年はどんな作品を観ることができるのか、毎年ワクワクしながら審査に臨みます。SNS等あらゆるところに映像が氾濫している今日、この映像祭は例え短編であっても作者が分かる作品群です。・・・新鮮なアマチュアの方々の目に、この世の中はどう映っているのだろうか・・・。どのようにそれを捉え表現してくれるのか・・・。折々の時代のひだが刻まれ、歴史の証人にもなりうる映像が作品として表現される。これが一番大事な事だと思っています。 ですから応募作品がフィクションであれ、ノンフィクションであれ、ドキュメント風でも劇仕立てでもアニメでも多彩な作品が集まることを楽しみにしています。
映像づくりにはアマチュアでも作者が全霊をつぎ込んで製作した作品。これを足を運んで観客が観る。この一体感こそが大切なことです。
だからこそ作者がこれだけは観て欲しい映像、これだけは伝えたい言葉をしっかりと織り交ぜてくれれば、一級の作品になると信じます。
皆さんの眼は新鮮で確かです。自信を持ってこれからも応募ください。
(京・嵐山にて)
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NHK神戸放送局
コンテンツセンター長
小林 和樹
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丹波篠山映像祭
初めて審査に参加し、心の動く映像を丹念に発掘されていることに感動しました。鬼を取り巻く笑顔と泣き顔、河原の木と空それに本と人、トラクターに群れるツバメ、古い校舎の黒光りする手すり、ベッドで流れる涙、津波から免れた人の証言・・。そこにいなければ撮れない印象的な映像を見せていただいたことをありがたく思います。
一方で、そうした映像を切り取った作者のテーマが、見ている人に伝わりきれていないとも思いました。一つ一つのシーンやインタビューは素晴らしくても、それを重ねすぎると、逆にテーマの邪魔をしてしまいます。苦労して撮影したシーンは、かわいい。それでも涙をのんでカットする勇気と構成がもっと欲しかったです。その点で、「川の図書館」は、一つ一つのインタビューが、前のインタビューを補完しながら展開し、コロナ禍でつながりを求める人々の根源的な願いが表現できていました。
ただ、映像作品は映像と音が巧みに組み合わさり調和して初めて良いものになります。映像、字幕、環境音、ナレーション、そして音楽。どのシーンに注目して欲しいのか、どんな気分で見て欲しいのか、どこに緊張を作り緩和するのか、クライマックスは情報なのか、音なのか。無音の映像だけということもありえます。映像でリズムを作りハーモニーを届けたいです。声が聞こえなかったり、逆に要素を盛り込みすぎたりすると伝わりません。この点で「雨がぴりぴり」は、一つ一つのシーンは際立ち、印象に残りました。
手触り感も大事にしたいです。大賞の「伝統を受け継ぐ」は、その場の空気を最も伝えていました。テレビや映画ではCGなどのデジタル表現が増えています。しかし今回、現実の映像の手触り感が心に沁みることを再確認できました。応募者そして運営の皆様に感謝します。そして、これからも思いがけない映像やストーリーに出会えることを楽しみにしています。
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サンテレビジョン
地域情報局長
久保 仁
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第34回丹波篠山映像大賞に寄せて
今年もこのような素晴らしい映像祭に審査委員として参加させて頂き、誠にありがとうございました。また、開催にご尽力いただいた関係各所の皆さま、ご参加の皆さまに大変感謝いたします。コロナはまだ収束しておりませんが、観客の皆さまと共に全国から選ばれた映像作品を存分に楽しむことができました。
今回の作品の中で、私が最も印象に残ったのは、神奈川県川崎市の熊西叶乃さん作品、
「川の図書館」でした。コロナ渦の中、高校生が本を通して人との交流を図るというもの。
「生きる」というテーマにも大変マッチしていましたが、何よりも川の側であおぞら図書館をやるって素敵じゃないですか?そこに集う人達の笑顔と彼女が生き生きと活動している姿に大変感動しました。この時期、ともすれば人との交流は批判を浴び、楽しむことが憚れます。青空のもと、本を楽しむ皆さんと共に作っている参加型の川の図書館、是非今後とも続けてほしいと感じました。
アマチュアの皆様の作品を見て思うことは、着眼点は素晴らしいのですが、映像を盛り込み過ぎているということです。短い時間の中で表現する時、映像や沢山の説明やナレーションが果たして効果的でしょうか?もっとその素材を活かして、この作品で一番伝えたいことを絞って表現してみてはいかがでしょう。今回も多くの作品に触れ、大いに刺激を受けました。ありがとうございました。
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実行委員長
奥野 勇 |
作文を書こう!
今回の作品の中で最も印象に残ったのは「エール」でした。
どんなに元気な人でも、人間なら誰にも将来やってくる可能性のある共通の難題。
そんな極めてデリケートなテーマに向き合い、実行に移したことをまず評価します。
ご家族や関係者にとっては貴重な記録となったことでしょう。ただ余りにもストレートな
表現が続いたために、コンテストの視聴者としては特に後半で辛い時間が生じてしまいました。
作品名の「エール」は、誰にどんなエールを送りたかったのか?もう少し突き詰めたいところです。
大賞に輝いた「伝統を受け継ぐ」は総合力で一番素晴らしい作品でした。子供の泣き顔など、良い
表情が撮れていたのは素晴らしかったです。視聴している者の想像力を膨らませ、課題を提示し
つつ未来を感じさせてくれました。欲を言えば、作品を通しての主人公を立てられれば更に力強い
作品になったのではないでしょうか。何故、伝統を必死に継承しようとしているのか?祭りの関係
者の中のひとりにスポットを当てその日常を追って行くことで、地域や人々にとって祭りの持つ
意味合いがおのずと浮き上がって来ると思います。
作品作りで大切なのは、何を撮るかが決まったら「5W1H」を明確にすること。そこからすべては
始まります。そこが曖昧になると、伝えたいメッセージや内容があやふやになってしまいます。
それらがはっきりすれば、ドキュメンタリー・ドラマ仕立て・ハウツーもの・ミュージカルなどの
ジャンルが決まり、構成案~シナリオ(作文)へと進めていくことで明確に仕上がりをイメージする
ことが出来ます。特に、誰に(Who)何を(What)何故(Why)伝えたいのか?です。
更に、視聴者が少しでも余韻を感じ想像できる余地を残せるかがポイントとなってきます。作品の
冒頭の説明(つかみ)は必要ですが、中盤~後半に語りすぎないことが大切です。語りすぎない
ことで視聴者の想像力が働き、そこで感じたことが余韻となって心に残って行くものです。映像の
持つ力や意味、また音の間合いなどが大切になりますのでここは特に妥協せず拘りましょう。
「生きる」というテーマは、難し過ぎる・ハードルが高い、という意見を多数頂戴します。
難しく考えずに、誰でも困難に立ち向かう姿勢や目標に向かって精一杯努力する姿があれば、それを
感じたまま切り取れば良いのです。物語が途中なら結論を出す必要はありません。「つづく」でも
構わないのです。迷えば迷ったなりに立ち止まり、課題を洗い出しそのままを作文することです。
作文を書くことで、自分が伝えたいことが何なのかが見えてきます。
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