30回大会を終えて 審査委員からのメッセージ

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西垣

映画監督

西垣 吉春
(審査委員長)

大画面で見てみると!

 決勝大会は大型スクリーンで鑑賞することになる。800人収容の劇場では当然な事。約幅10メートルのスクリーン。画面の中央は勿論、画面の隅々まで気を配らないと見えなくていいものまで見えてしまう。編集の時はパソコン画面での作業であろうから気にならない片隅も、大画面では気になることがある。字幕スーパーにしても大きすぎると折角の映像が壊れてしまう。
 音楽やナレーションも同じことが言える。音楽が大音量過ぎたり、ナレーションと音量がガチンコして効果が半減したりしてしまうことがある。
 勿論アマチュアの皆さんの力作、その辺は織り込んでの審査だが、他人に鑑賞してもらう以上は、この辺りを配慮してもらうともっと素晴らしい作品になったと思われます。
 上位3賞は甲乙つけがたい作品の出来でした。金子作品は大変よく纏り、いや纏り過ぎたのかも知れませんネ。その分魅力的に映らなかったのかも知れません。村上作品は登り窯の中にまで入ると言うキャメラアングルが良かったと思います。大賞の谷口作品はタイトルも引き付けたし丁寧にモンタージュされていました。ナレーションが必要以上に入って五月蠅く感じましたが、その辺りを次回作で改善されることを望みます。
 映像で充分説明がつくものにはナレーションの必要はなく、音楽は必要に応じて出来るだけ少なくしましょう。そうすると鑑賞者が考えながら見てくれるのではないでしょうか。
                          (京・嵐山にて)

菊地 夏也

NHK神戸放送局
放送部長

菊地 夏也

撮影前の取材を大事に!

  

 今回、グランプリ部門でビデオ大賞に選ばれた「オトシブミのお母さん」は自然科学番組のように丁寧に撮影された作品だった。作者の谷口正治さんは、元中学校の理科教師ということでオトシブミの生態について詳しいからこそ成り立った構成で、人間社会と比較しての皮肉の効いたコメントも良かった。ただ、会場での講評にもあったが、映像をじっくり見てもらうためには、コメントをもっと削ぎ落す必要はあったかと思う。
 また、NHK神戸放送局長賞に選ばれた「私の中の三江線」は、廃線になる三江線と沿線の駅周辺の商店街の衰退が捉えられ、ジャーナリスティックな視点を持った作品だった。おしむらくは、鉄道と商店の経営者との接点をもっと深く描くことができれば、さらに味わい深い作品になったであろう。
 今回の審査にあたって数々の応募作品を見たが、作者が住んでいる地元を撮影するのではなく、他県などに撮影に行って制作された作品が多いことが気になった。わざわざ遠いところに行くのではなく、地元で撮影したほうが深い内容になると思うのだが、地元については既に撮り尽したのか、地元での人間関係が希薄になり面白い素材が見つからないのか、寂しい感じがした。
 さらに、最近は、スマホでも簡単に映像を撮影でき、SNSで発信できるなかで、きちんとした映像作品として、内容を構成していくことを厭う傾向が感じられるのも残念なことだ。5分間程度の作品でも、強く訴える内容にするためには、少なくとも2つは核となるエピソードが必要であり、そのためには掘り下げた取材が求められる。特に若い世代には、撮影前の取材こそ大事であることを踏まえて、映像作品づくりに挑戦していってほしいと思う。

大同

サンテレビジョン
報道制作局長

石濵 真司 


第30回大会を終えて

 

 第30回記念大会おめでとうございます。 アマチュアビデオコンテストの草分けとして全国から優秀な作品が集まるこの大会の歴史の一端に携われて大変嬉しく思います。
 記念すべき30回の大賞作品「オトシブミのお母さん」は、まさに"不思議発見"でした。オトシブミのメスが葉っぱに卵を産み付け、包み込み『ゆりかご』を作る様子はまさに芸術のよう。元理科の先生という作者の谷口さんが、子供たちの教材用に丁寧に撮影・記録した力作です。メスが『ゆりかご』を作る横でオスたちがケンカをする貴重な映像は、何度も足を運び、粘り強くカメラを構えていた賜物でしょう。この作品は、まだまだ知らない自然界の不思議を教えてくれました。
 「生きる ち・か・ら~山の学園はワイナリー~」は、知的障がい者らがワインづくりに取り組む「ココ・ファーム・ワイナリー」の一年の活動を紹介しています。ぶどう栽培からワイン製造の工程や収穫祭の模様を撮影・編集。見応えのある作品ですが、働いている人たちの姿がもう少しあれば、より深みがある作品になっていたでしょう。
 「登り窯と生きる・三代目陶芸家」は、リウマチを患いながら、伝統の窯焼きを行う立杭焼の陶芸家に密着しています。窯の中に作品を並べる映像など新たな視点で新鮮でした。
 「生きる」をテーマに、毎回多くの作品が寄せられます。しかし、近年10代~40代の応募者が少なくなってきています。今では誰もがスマートフォンで撮影し、すぐにSNS等に動画をアップできる時代。多くの人たちは、ライフスタイルの中で、『映像』に慣れ親しんでいます。今後この大会を盛り上げるには、このような人たちに積極的に応募してもらう工夫が必要かと思います。
 丹波篠山ビデオ大賞の益々の発展を楽しみにしています。

奥野

実行委員長
奥野  勇

第30回大会を振り返って

 

 大賞の「オトシブミのお母さん」は虫の生態という地味な素材ではありますが、小さな虫の営みの中にも自然の不思議さ・偉大さがあり、そこに人間が名付けた「オトシブミ」という名が相まって、身近に感じられる作品でした。この作品からは、どうしても人間には及ばない力が有ることを思い知らされます。作品を観た多くの人に新しい「発見」があり、また「余韻」を感じられたのではないかと思います。おそらく作者は、事前にこの対象であるオトシブミの生態を丹念に勉強し調べ、根気よく撮影に挑んだものと推測します。多少、解説し過ぎの感は否めませんが、虫たちの神秘的な生態がそれらを吹き飛ばしています。欲を言えば、人間の「落とし文」の要素をラストシーンに少し絡められれば、隠し味が効いて更に深く親しめる作品になったかと思います。
 その他の作品で個人的には「民話と共に生きる」は、自分もなまはげの現場に居るかのように楽しく拝見しました。他にも「三江線」「ワイナリー」「パラグライダー」「劇団」そして「登り窯」と、作者からスポットライトを浴びた魅力ある素材が勢ぞろいしましたが、それぞれどの作品も説明し過ぎており、観る人の想像力を掻き立てられなかった。ゆえに余韻が無くなってしまいました。
 また蛇足になりますが、私が注目した素材が有ります。チャレンジ部門の人気ナンバーワン賞に輝いた「天下の奇祭 鱧切祭」です。これは珍しい!素材自体に力がありますが、さらにその周辺にも興味をそそられました。あの祭りのまわりには、もっともっと興味深いものが隠れているのではないかと想像できます。

<作家の方に>
 共感を得る作品を作るポイントは、まず平凡であっても「素材」があり、さらにその素材の切り取り方や見方によって「発見」や「再認識」があり「魅力」が生まれ「想像力」を掻き立てられ、観た後「余韻」が残る、という事でしょう。素材を紹介するのは必要なことなのですが、説明し過ぎることによって観る人の想像力を奪っており、もったいないと思います。それなりの作品は出来ても「ほほ~!」と感心したり「えぇ~そうなんだ!」とびっくりしたり、「なるほど!」と頷いたり「食べたい!」「行ってみたい!」など、観る人の感性をくすぐる作品を目指してほしい。人間の「想像力」を引っ張り出すことが出来れば、作家としての表現の幅が何倍にも広がります。

 


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